
貫井徳郎を読むならコレ!【素人目線で】選ぶ、おすすめ小説ランキング
実際に読んだ貫井徳郎さんの小説のなかから読むならコレ!という、がっつりハマる、おすすめの小説をランキング形式で紹介。
特別な文学的才能や知識がない管理人ですが、【素人目線で】先入観なく遠慮なく、素直に面白いと思って選んだ貫井徳郎さんの小説を紹介。
独断と偏見そして【素人目線で選んだ】貫井徳郎小説の決定版です。
これから貫井徳郎さんの小説を読もうと思っていて、どの小説から読めばよいか迷っている方の参考になれば幸いです。
関連コンテンツ
貫井徳郎 小説 全作品を刊行された順番で紹介
貫井徳郎さんの小説 全作品を刊行された順番にあらすじと一緒に紹介しています。
東野圭吾の次に読むならこの作品
東野圭吾さんの作品が好きな方が次に読むならこの作家!この小説!というテーマで紹介します。
貫井徳郎 小説おすすめランキング
順位 | 作品名 | 評価 |
---|---|---|
![]() |
後悔と真実の色 | ![]() |
![]() |
慟哭 | ![]() |
![]() |
宿命と真実の炎 | ![]() |
4位 | 空白の叫び | ![]() |
5位 | 夜想 | ![]() |
6位 | 追憶のかけら | ![]() |
7位 | 灰色の虹 | ![]() |
8位 | 失踪症候群 | ![]() |
9位 | 天使の屍 | ![]() |
10位 | 崩れる 結婚にまつわる八つの風景 | ![]() |
11位 | 光と影の誘惑 | ![]() |
12位 | 転生 | ![]() |
13位 | 殺人症候群 | ![]() |
14位 | 修羅の終わり | ![]() |
15位 | 私に似た人 | ![]() |
16位 | ミハスの落日 | ![]() |
17位 | 愚行録 | ![]() |
18位 | 微笑む人 | ![]() |
19位 | 我が心の底の光 | ![]() |
20位 | 誘拐症候群 | ![]() |
21位 | プリズム | ![]() |
22位 | 被害者は誰? | ![]() |
23位 | 乱反射 | ![]() |
24位 | 迷宮遡行 | ![]() |
25位 | ドミノ倒し | ![]() |
26位 | 鬼流殺生祭 | ![]() |
27位 | さよならの代わりに | ![]() |
28位 | 明日の空 | ![]() |
29位 | 神のふたつの貌(かお) | ![]() |
<【素人目線】評価の目安>
本選びの参考にしてもらえると幸いです。
:超おすすめ、まさに貫井徳郎ワールド!★5つはぜひ全部読んで欲しい!
:貫井徳郎ファンじゃなくても、おすすめの高評価
:貫井徳郎ファンなら、とりあえず読んでおきたい作品。
:イマイチかな?好みが分かれる平均点以下。
:読んでいる途中から失敗したと思った残念な1冊。。。
スポンサードリンク
後悔と真実の色
衝撃的な結末。そして、あり得なさそうな小説の世界とあり得そうな現実の世界を絶妙に繋いだ代表作
「後悔と真実の色」は2009年に刊行された貫井徳郎さんの長編ミステリー小説です。第23回山本周五郎賞を受賞しています。
700頁近い、分厚い本の厚みに一瞬読み始めるのを躊躇いますが一度読み始めたら、貫井徳郎さんの小説は読ませる力があり、また文章がとても読みやすいので、怒涛の如く一気に読み進められます。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、「後悔と真実の色」の面白いところは最後の最後まで犯人が分からないところ。サイトのレビューなどを見ているとすぐに犯人が分かったと言われている方もいますが、少なくとも当サイト管理人は最後の最後まで分かりませんでした。なので犯人が判明した時は衝撃的で「えっ!?」って混乱して状況が掴めず、2、3ページ戻って読み直しました。
話の展開は、あり得なさそうな小説の世界(フィクション)とあり得そうな現実の世界(ノンフィクション)を絶妙に繋ぎ合わせて描かれているので、飽きずに、それでいて興醒めせずに読めます。
「後悔と真実の色」は、間違いなく貫井徳郎さんの代表作品です。
(単行本:2009年10月/文庫本:2012年10月)
山本周五郎賞とは?
主に大衆文学、時代小説の分野で昭和期に活躍した山本周五郎にちなみ、すぐれた物語性を有する小説・文芸書に贈られる文学賞である。主催は新潮文芸振興会、後援は新潮社。
長年にわたり新潮社が開催した日本文学大賞の後継イベントとして、純文学を主とする三島由紀夫賞とともに1988年に創設された。
(ウィキペディア(Wikipedia)より)
直木賞(直木三十五賞)につぐ、大衆小説(エンタメ小説)のための日本を代表する文学賞。歴史は1935年に創設された直木賞のほうが50年以上古い。主催は直木賞が文藝春秋社系列、山本周五郎賞が新潮社系列となっている。
メディア、ネット記事など見ていても、現時点では知名度、注目度ともに直木賞のほうが高いが、小説が面白いかどうかは別物!?
「貫井徳郎 後悔と真実の色」を探す
慟哭
結末が途中で分かっても最後まで面白く読めます。分かっているのに最後の1行に衝撃を受ける作品です。
「慟哭」は1993年に刊行された貫井徳郎さんのデビュー作です。生身の人間の強さ、弱さ、優しさ、怖さを、デビュー作とは思えない完成度で見事にリアルに描いた小説です。
「慟哭」は推理小説ですが、残念なことに途中で犯人が分かってしまいます。しかし、この作品の秀逸なところは、犯人が分かった後もその予測が当たっていないことを祈りながら、興味が覚めてしまうことなく最後まで面白く読めてしまうことです。
その意外性がこの小説の魅力です。おそらく貫井徳郎さんは読者が犯人を推定してしまうことを分かりつつ作品を描いていると思います。ちなみに当サイト管理人は一般的な読者の方よりも遅いほうだと思いますが、ちょうど話の中盤で犯人が分かりました。
そして犯人が分かっているにも関わらず、ラストの1行にドキッとします。当サイト管理人は、犯人が分かっているのに肩がビクッとなりました。それがこの小説の凄さだと思います。
(単行本:1993年10月/文庫本:1999年03月)
「貫井徳郎 慟哭」を探す
宿命と真実の炎
「後悔と真実の色」からパワーダウンは否めないものの、登場人物が個性的かつ魅力的で、とにかく没入感がハンパない
「宿命と真実の炎」は、「後悔と真実の色」の続編です。
「後悔と真実の色」は、山本周五郎賞受賞作で貫井徳郎さんの代表作と言っても過言ではないミステリ小説で、その「後悔と真実の色」と比較すると、「宿命と真実の炎」は多少のパワーダウンを否めないものの、登場人物が個性的かつ魅力的で、とにかく没入感がハンパないです。
600頁を超える長編ミステリー作品ですが、ストーリーが程良い緊張感を保ったまま、テンポよく進行するのと、貫井徳郎さんの読ませる力もあって、アッという間に読み切れます。
残念な点としては、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、犯行動機が今一つしっくりこず、腑に落ちないことと、種明しの説明がくどい感じがしました。一瞬で点と点が繋がって伏線回収する、ドキッと目が覚めるような種明しを期待していただけに、結末に冗長的な印象が残りました。
(単行本:2017年05月/文庫本:2020年10月)
「貫井徳郎 宿命と真実の炎」を探す
空白の叫び
総ページ数1200ページを超える長編大作を読ませる力とストーリー展開は圧巻
「空白の叫び」は、各巻400ページを超える上中下巻の三部作で、総ページ数1200ページを超える長編大作です。
刑罰ではなく教育を通じて更生させて、再犯を防ごうという考え方に基づく少年法を題材に扱ったミステリー小説です。
あまりのページ数に読み始めるのを躊躇しますが、いざ読み始めてみると、どんどんと読み進めていって気づいたら下巻の残り数十頁という感じで、貫井徳郎さんの読ませる力と飽きさせないストーリー展開は圧巻です。
「普通の中学生」が、なぜ人を殺したのか――。
小説は「胎動」「接触」「発動」の三部に分かれています。
第一部「胎動」では、生まれや境遇、性格も異なる3人の中学生がなぜ殺人者となったのかが描かれています。
第二部「接触」では、その3人が同じ少年院に収容されて出会い、過酷で陰湿な仕打ちで心が壊されて不思議な連帯感が生まれ、第三部「発動」では少年院を退院後、それぞれ自分の生活を取り戻そうとするが、周囲の目は冷たく、徐々に行き場をなくし、再び3人が出会う日が来ます。
第一部では人物や状況の描写が多く、少しダラダラとした感じになりますが、それが布石となって、第一部後半以降のスピード感は凄く、引き込まれ感が堪りません。
生まれも育ちも性格も違う3人の少年の視点で描かれているので飽きさせず、次の展開が気になって、次々と読み進めて行けます。気づいたら下巻の後半に差し掛かっていました。
少し残念なポイントは、エンディングです。
これだけの「超」長編大作なので、それだけエンディングに期待が掛かる分、どうストーリーを完結させるか?「超」長編大作に見合うエンディングは難しいだろうと、読みながら【素人目線】で感じていました。
予想できないような大どんでん返しを心待ちにしていた当サイト管理人としてはちょっと期待外れというか、読んでいる途中で話の流れに気づいてしまったのが残念でした。あと泣けるエンディングも期待しましたが、これも当サイト管理人的にはなく残念でした。
エンディングのイマイチ感を差し引いても、ストーリー序盤から終盤までワクワクしながら、これだけのボリューム感のある作品を読めたので満足度は高かったです。
(単行本:2006年08月/文庫本:2010年06月)
「貫井徳郎 空白の叫び」を探す
夜想
「慟哭」の先入観を捨てて読んでほしい。もう一つの名作
「夜想」は、貫井徳郎さんのデビュー作品でもある傑作「慟哭」で取り上げたテーマ<新興宗教>に再び挑んだ作品です。残酷な事故で妻と娘を失い、絶望のなか、ただただ惰性で生きる雪藤の前に現れた、特殊な力を持つ美少女、天美遥。彼女と出会ったことで雪藤の止まっていた時計が再び動き始める。
当サイト管理人は、「夜想」を読む前に「慟哭」を読んでいたため、「慟哭」の先入観を持ったまま、読み進めてしまいましたが、「慟哭」の先入観を持たずに読んだほうが小説が伝えたいことを素直に受け止められるように思いました。
終盤のトリックに一度ドキリとして、そして、もう一つのトリックにガッカリする
まったく異なる2つの話が同時進行する形でストーリーが展開されています。2つの話が交わった後の終盤のトリックには、背筋が寒くなるような感覚とともにドキリとさせられます。
その後、もう一つのトリックが準備されていますが、こちらは【素人目線】の当サイト管理人でも予測できてしまうようなトリックでちょっと興醒めします。ただ、それで終わりではなく、小説の結末が準備されているので、まぁご愛嬌かなと・・・
悲しみってのは絶対に乗り越えなきゃいけないものなのか・・・
悲しければ悲しいままでいてもいいじゃないのか、悲しいことや辛いことには立ち向かっていかなければならないように考えてしまう、それを克服して心の奥底にしまい込んでしまわないといけないと義務のように感じてしまう。でも本当はそんな必要はない。どうしても乗り越えられない悲しみもある。だったら無理に乗り越える必要はない。乗り越えられないことを恥に感じる必要なんてない。
筆者、貫井徳郎さんは、これを「夜想」を通じて一番、伝えたかったのではないかと思いました。
(単行本:2007年05月/文庫本:2009年11月)
「貫井徳郎 夜想」を探す
追憶のかけら
読み始めに挫けなくて良かった面白い作品
「追憶のかけら」は・・・うだつが上がらない大学講師が棚ぼたで物故作家(亡くなった作家)の未発表手記を入手。名を上げるために物故作家の自殺の真相を究明するために調査をするなかで、得体の知れない悪意に飲み込まれていく・・・という長編ミステリ小説。
正直なところ、600頁を超える厚みのある小説なので読み始めるときに、なかなか手を出しにくい感じがありました。またようやく手にして読み始めると、数十頁で物故作家の未発表手記を読ませる場面があり、これが長い!(結局300頁近くもありました)しかも旧字体で書かれている!?これだけで、文学的な才能のない当サイト管理人は読むのを放棄しようと思いましたが、結果、途中で読むのを止めずに正解でした。
旧字体でしたが、文学的な才能のない当サイト管理人でも、あまり苦労せずに読み進めることが出来ました。しかも手記の内容が読み進めるほどに面白い!
二転三転、三転四転するストーリー展開で、最後の一行まで興味が途切れず読み切れるけれど・・・
本の厚みの威圧感と旧字体の文章に最初、怯んでしまいましたが、二転三転、三転四転するストーリー展開で、600頁以上の大作を最後まで飽きずに読み切れます。貫井徳郎さんらしくない意外な結末でしたが、最後の文章、最後の一行まで飽きずに読み切れました。
ただ残念だったのは、ネタバレになるため詳しくは書きませんが、どうも納得いかない、不自然なストーリー展開が随所随所にあるという違和感が面白く読み進めている間にもモヤモヤとして気になったことがマイナスポイントでした。
(単行本:2004年07月/文庫本:2008年07月)
「貫井徳郎 追憶のかけら」を探す
灰色の虹
冤罪、冤罪が生み出す不幸の連鎖を改めて考えさせられる問題作だが・・・
「灰色の虹」は2010年に刊行された貫井徳郎さんの長編推理小説です。
身に覚えのない上司殺しの罪を課された、気弱でおとなしい若者、江木雅史。その冤罪により、彼自身の人生だけでなく、両親、姉、恋人の日常生活が奪われてしまう様子がリアルに描かれている。
新聞やテレビで冤罪という文字を目にしたことはあるが、それがどう生み出されて、どう作り上げられて、どう捏造されていくのか具体的に描かれています。
犯罪を犯した者がその本人だけでなく、家族や関係者の生活までもを狂わせてしまうというのはよく目にしたり聞いたりする話だが、何の罪も犯していない冤罪によって、本人、家族、恋人の生活がめちゃくちゃになるのは耐えがたいものがあります。
圧倒的なリアリティを感じながら凄いスピードで読み進めるものの、結末にパワー不足が・・・
あまりにも現実味があるので、もし自分に同じことが起こったらどうしようという恐怖心すら覚えながら、ドキドキして読み進められます。700ページ以上ある長編小説なので、最初は手に取るのに気が引けますが、その何とも言えないドキドキ感を持ちながら、700ページのボリュームを感じないぐらいのスピードでどんどん読めてしまいます。
しかし600数十ページに差し掛かったあたりで、残念ながら話の展開が見えてしまいます。それでも、その予想が外れてくれることやさらに一押しある話の展開を期待しながら読み切るのですが、ほぼ思った通りの結末を迎えてしまうところがとても残念なポイントでした。
600数十ページ、ドキドキしながら読ませてくれたので、最後にもう一押し、ガツンとあれば最高だったのになぁと思わせる作品でした。
(単行本:2010年10月/文庫本:2013年10月)
「貫井徳郎 灰色の虹」を探す
失踪症候群
貫井徳郎さんの読ませる力を感じる面白い小説!それだけに結末の尻すぼみな拍子抜け感だけが残念。。
失踪症候群は、貫井徳郎さんの推理小説「症候群シリーズ」の第一弾です。
警視庁人事二課に身をおく、環敬吾が率いる、特殊任務チームが、警視庁が表立って動けない事件を、時には超法規的手段を使ってでも解決に導くという小説。
私立探偵、托鉢僧(たくはつそう)、肉体労働者のメンバーで構成されるという特殊任務チームという設定は古典的ですが、話の振り幅を持たせやすくシンプルに興味を引きます。
ストーリーの展開が単純なので、読んでいる途中で何回か、その先の話の展開が読めてしまいますが、不思議なことに先が読めてからも、話が二転三転することで興醒めすることなくどんどん読み進められます。貫井徳郎さんの読ませる力を感じる面白い小説です。
残念だったのは結末です。どうも尻すぼみな結末で拍子抜けした感じで読み終わったのは残念でした。
ただ本当に最後の最後まで面白く読めるので、ほかの「症候群シリーズ」の作品(誘拐症候群、殺人症候群)も読みたいと思わせる、おすすめの小説です。
(単行本:1995年11月/文庫本:1998年03月)
「貫井徳郎 失踪症候群」を探す
天使の屍
衝撃にも似た驚きの結末、これが大人には到底、理解できない「子供たちの理論」なのか!?
中学二年生の息子が飛び降り自殺をした。そして遺体からはある薬物が検出された―――「天使の屍」は、平穏な家族を襲った突然の悲劇、少年たちの心の闇を描いた傑作長編ミステリーです。
長編となっていますが、300ページぐらいでそれほど分厚くないのと、ストーリー展開が速いので、想像以上にサクサクっと読めます。
ただ中盤は、同じような展開が続くのでちょっと辟易とするところもあります。
ラストは想定外の展開で衝撃にも似た驚きがありますが・・・・よくよく考えると、「そんな理由で自殺するのか?」という疑問が首をもたげます。それが大人には到底、理解できない「子供たちの理論」なのか!?
(単行本:1996年11月/文庫本:2000年05月)
「貫井徳郎 天使の屍」を探す
崩れる 結婚にまつわる八つの風景
最後の1行まで気の抜けない傑作短編ミステリー
崩れる 結婚にまつわる八つの風景は「結婚」にまつわる、狂気と企みに満ちた8つの傑作ミステリー短編集です。
「結婚」をテーマにしていますが良い意味でストーリー設定に偏りは感じさせず、ちょっとサイコパスやホラーな部分もあり、ドキドキしながら、1話あたり30~40ページの短編集ということもあって、テンポよくサクサクっと読み進められます。
世にも奇妙な物語などのミステリー系ドラマや小説で見たことがありそうなトリックや謎解きですが、最後の1、2行で話の展開を一転させるので、展開が気になりつつワクワクしながら読み終えます。最後まで気を抜かせずに読ませる力は流石だなと思いました。
(単行本:1997年07月/文庫本:2000年07月)
「貫井徳郎 崩れる 結婚にまつわる八つの風景」を探す
貫井徳郎/光と影の誘惑
まさに玉石混交。タイトル作には、見事に騙されました
光と影の誘惑は、中編ミステリを4作品収録した中編小説集です。素晴らしい作品と今一つな作品が入り混じった、バラツキがとても大きい小説集だと思いました。
作品ごとに評価をつけるなら
「長く孤独な誘拐」★★☆☆☆
「二十四羽の目撃者」★☆☆☆☆
「光と影の誘惑」★★★★★
「我が母の教えたまいし歌」★★★☆☆
「長く孤独な誘拐」は、誘拐の仕組み、着想としては面白いと思いましたが、種明かしは全く驚きがなく陳腐な印象を受けました。種明かしのトリックが効いていれば大化けするネタかなと【素人目線】で感じました。
「二十四羽の目撃者」はアメリカを舞台としている時点で嫌な予感がしましたが、その予感が的中しました。最初から最後まで没入感のないストーリー展開で、小説の中でもったいぶっていた種明かしも不発に終わりました。
「光と影の誘惑」はさすが表題作だけあって面白い!衝撃の結末で、最後の最後まで、まんまと騙されました。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、種明かしの終わりの1~2ページを読んだ後に、どう騙されたのか最初から読み直しました。おそらく読み直す方が多いと思います。貫井徳郎さんらしい、トリックが効いた作品で、この作品だけでも読む価値ありで、おすすめです。
「我が母の教えたまいし歌」は、トリックとしては面白いけれど、【素人目線】の管理人でも読んでいる途中でトリックが分かってしまう稚拙さがマイナスポイントです。
エンディングまでネタバレせずに煙幕を張り通していれば、種明かしの衝撃度は大きかったと思うのですが、途中で薄々分かってしまうと、結末を読んでもやっぱりね、という感じになってしまいました。
(単行本:1998年08月/文庫本:2002年01月)
「貫井徳郎 光と影の誘惑」を探す
転生
ワクワク感があり没入感もあるが、テーマの割にライトなタッチに違和感が。。。
転生は、心臓移植をテーマにしたミステリー小説です。読み始めてすぐに、東野圭吾さんの「変身」とどことなく似ているなーというのが最初の感想でした。とはいえ、悪意は感じず、臓器移植をテーマにした小説だと、多くの作家が(素人でも)思いつきそうな発想かなーと。
そのシンプルな発想をいかに面白く読ませるか、が作家の腕の見せどころだと思います。
序盤に主人公の身の回りで起こる状況描写がダラダラと続くのでちょっと冗長気味な印象です。序盤の終わりごろには、この先どうなるんだろうか・・・というワクワクする話の展開にグイグイと引き込まれて、ほどよい没入感もあり、テンポよく読み進められます。
一方で、心臓移植という社会的にも重いテーマで、医学的にも法的、道徳的にも扱いの難しい内容を取り上げているにもかかわらず、登場人物の行動や発言がどことなく軽率な印象で、迫るようなリアリティが感じられないのが残念でした。
心臓移植という重厚なテーマをライトに描くというのもアリなのかもしれませんが、重く深く残る読後感を期待していた当サイト管理人的にとって拍子抜けで、違和感がありました。
(単行本:1999年06月/文庫本:2003年02月)
「貫井徳郎 転生」を探す
殺人症候群
700頁のボリュームを感じさせずにどんどん読ませるストーリー展開は見事ですが・・・
殺人症候群は、貫井徳郎さんの「症候群シリーズ」の第3弾で、この作品をもって「症候群シリーズ」は完結します。
未成年であることや精神障害を持っていることを理由に法による処罰を免れた加害者―――愛する者を殺されて、自らの手で復讐することは是か非か。社会性の強いテーマとした長編小説です。
テンポよく渋滞することなくストーリーが展開していくので、700頁のボリュームを感じさせずにどんどん読み進めることができます。ただし、グロテスクで残酷な描写が随所に見られるので、そういった内容が苦手な方は避けたほうが無難かもしれません。
次の展開が気になりながらテンポよく読み進められる一方、未成年や精神障害者の刑事責任能力という重厚なテーマにも関わらず、深く重く考えさせられるシーンがなかったのは残念なポイントです。
小説終盤の最初のほうに小説最大の見せ場でもあるトリックがあります。ただし、ここまでがこの小説のピークで、その後がご都合主義の違和感のある展開で、さらにグダグダな泥沼劇になってしまいました。もう少し完結感のあるエンディングを期待していたので残念でした。
(単行本:2002年01月/文庫本:2005年06月)
「貫井徳郎 殺人症候群」を探す
修羅の終わり
ほぼ800ページの長編作品を飽きさせずに読ませる力は凄い!と思いつつも・・・
「修羅の終わり」は1997年に刊行された貫井徳郎さんの長編本格ミステリー小説です。警察官の鷲尾、公安刑事の久我、記憶喪失の〈僕〉の物語が錯綜しながら、クライマックスに繋がります。総ページ数800頁に近い長編作品なので読み始めるのを躊躇するような本の厚みです。
警察官・公安刑事・記憶喪失の〈僕〉の3つのストーリーがバラバラに同時進行するなかで、徐々にそれぞれのストーリーが関連していくのですが、関連性を持ち始めるのが遅い!いつ繋がるのだろうという期待感を持ちながら読み進めていく時間がかなり長いです。
それでも、程よい緊張感とワクワク感を維持しながら読ませる力は流石だなぁと思いました。
しかしながらエンディングがイマイチでした。予想を裏切るようなどんでん返しや驚きもなく、スッキリとした爽快感のある読後感もない、起伏のないエンディングでした。あわせてネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、辻褄が合わない点や結局、小説で描かれない疑問や違和感などが多すぎるのもマイナスポイントでした。
事細かにすべてを小説のなかで描く必要はないと思いますが、読み終わってみて、「なぜ・・・?」「・・・はどういうこと?」という疑問点が多すぎる気がします。読ませる力は凄いですが、読み終わってみると話の本筋に関係のない描写も多くページの使い方が今一つという印象の作品です。
(単行本:1997年02月/文庫本:2000年01月)
「貫井徳郎 修羅の終わり」を探す
私に似た人
1つ1つの短編は面白く読めるけど、結末がいま一つ。
「私に似た人」は、小規模なテロが頻発するようになった日本を舞台に、テロに走る者、テロリストを追う者、テロリストを憎悪する者など・・・各々の心象と日常のドラマを描いた小説です。
「樋口達郎の場合」というように10章の短編で構成されていて、メインの登場人物と描かれる視点が切り替わりつつ、話が進行します。
ちょっと腑に落ちないところや違和感を感じるところはあるものの、短編ながら1つ1つの話の完成度が高く、面白く読み進められます。
バラバラに進行しているかのように見えているそれぞれの短編(点)が最後、繋がり、張られた伏線をどう回収するのか?
小説としては、とても面白く、興味を掻き立てられる編成だと思いました。
結末は、テロの真相?テロの裏側について?どんな衝撃・驚きの種明かしが待っているのか、小説終盤にかけて否が応でも期待は高まりましたが、正直なところ、期待外れの結末でした。
ネタバレになるので詳しく書けませんが、意外性は多少あったものの、それまでに描かれてきたテロの背景や内容と比べると驚きや重厚感がなく、急に尻すぼみな感じで、残念かつ今ひとつ納得できない結末でした。
(単行本:2014年04月/文庫本:2017年06月)
「貫井徳郎 私に似た人」を探す
ミハスの落日/貫井徳郎
海外書籍の翻訳版を読んでいるような・・・どの短編も話の序盤から中盤にかけて面白いだけど・・・
ミハスの落日は、スペイン、スウェーデン、米国、インドネシア、そいてエジプトと海外諸国を舞台とした5つのミステリー短編集です。各短編の【素人目線】の評価は、満点★5つでこんな感じです。
・ミハスの落日 ★
・ストックホルムの埋み火(うずみび) ★★
・サンフランシスコの深い闇 ★★
・ジャカルタの黎明 ★★
・カイロの残照 ★★★
どの短編小説もストーリーの序盤から中盤にかけて面白そうなんだけど、エンディング、トリックが今一つで、かなり無理があるという感想です。
外国を舞台にしているから、貫井徳郎さんの作品を読んでいる感じではなく、海外ミステリー小説の日本語翻訳版を読んでいるような感じ。貫井徳郎さん自身が一度こんな作品を書いてみたかったら書いてみた・・・そんな印象を受けます。
(単行本:2007年02月/文庫本:2010年03月)
「貫井徳郎 ミハスの落日」を探す
愚行録
最後まで面白く読めましたが、如何せん読後感が。。。
愚行録は、2006年3月に刊行された貫井徳郎さんのミステリー小説です。第135回直木賞の候補になり、2017年には妻夫木聡さん、満島ひかりさん出演で映画化されています。
一家四人が惨殺された1年前の未解決事件について、被害者の関係者たちがルポライターのインタビューに応える形で話が進んでいきます。
小説のタイトルどおり、愚かな人たちが被害者の関係者として登場して、さまざまな愚行録を語り、徐々に被害者像、犯人像が明らかになっていきます。
インタビュー形式で進む小説は初めて読んだので、最初はとても新鮮でしたが、インタビューが延々と続くので途中で少しダレてきました。
読み始めたときはイントロとしてインタビューで小説が始まり、そこからストーリーが展開すると思っていたので、いつまでも続くインタビューに余計に飽きてしまったという感じです。
話の展開のスピード感も、インタビュー=過去の話ということもあってリアルタイムの緊張感がなく一歩引いて俯瞰する感じでストーリーを眺めている印象です。それがこの小説の狙い通りの読み方なのかもしれませんがドキドキ感に欠けます。
話の結末はあぁ・・・なるほど、そう繋がるのかという感じです。ただ読後感は良くないですね。最後まで結末が気になったまま面白く読み進められましたが、スッキリせず、気持ち悪さが残る終わり方です。
いずれにしても評価が大きく分かれそうな作品です。
(単行本:2006年03月/文庫本:2009年04月)
「貫井徳郎 愚行録」を探す
微笑む人
各章、面白い。面白いのだけれど、登場人物への思い入れがイマ一つ。そして酷評の多い「戦慄のラスト」は・・・
「微笑む人」はエリート銀行員が「本が増えて家が手狭になった」という不可解な理由で妻子を殺害。小説家の「私」が事件をノンフィクションにまとめるべく取材し、その真相に迫ろうとするミステリー小説。
小説は5つの章に分かれていて、すべての章が取材した内容をベースに描かれています。取材した内容と言ってしまうと新聞や雑誌の記事を想像しますが、しっかり小説として面白く読ませる内容になっています。各章が繋がって1つの小説になっていますが、それぞれの章でストーリーに話の区切りがあるので、とてもテンポよく読めます。
ただ話の中心人物であり、犯人でもあるエリート銀行員、仁藤俊実に興味を持ちつつも、思い入れが持てないので、どっぷり小説の世界に引き込まれることがありませんでした。どこか距離をおいた客観的な感じで見ているので、ハラハラドキドキがありませんでした。
また何かと酷評の多い小説の結末についてですが、当サイト管理人としては、世間で酷評されているほど酷いエンディングだとは思いませんでした。おそらく裏表紙に書かれている「戦慄のラストに驚愕必至!」という一文を期待すると期待外れになると思います。どちらかといえば、余韻を残す、そんな結末です。
ちなみに小説の本筋ではないかもしれませんが、最後の最後に「微笑む人」でモヤっとしたことを紹介しておきます。
貫井徳郎さんの微笑む人のWikipediaを見ると、小説家の「私」が女性小説家と書かれていました。しかし当サイト管理人は、小説家の「私」は男性だと思って、ずっと読んでいました。Wikiの記事をみて、もう一度、パラパラと斜め読みをし直してみましたが、女性だという根拠を見つけることが出来ませんでした。
あとまったく小説とは関係ない話ですが、小説の表示の絵の男性が斎藤工さんに見えてしかたがありません。2020年3月のテレビドラマ化では松坂桃李さんが主演されたようですが。
(単行本:2012年08月/文庫本:2015年10月)
「貫井徳郎 微笑む人」を探す
我が心の底の光
悲しく残酷な社会問題を題材に取り上げた作品。貫井徳郎さんらしい衝撃のラスト、でも何か物足りない。
「我が心の底の光」は、
母は死に、父は人を殺した――。五歳で叔父夫婦に引き取られ、豊かさとは無縁の少年時代を過ごした主人公、峰岸晄。生きることに強い執着を抱きながらも、普通の人生を捨てた晄が、遂にある計画を実行へと移していくストーリーを描いた、衝撃のラストが心を抉(えぐ)る傑作長編作品です。
主人公、峰岸晄の14歳、16歳、19歳、21歳、25歳、29歳の出来事を描いた6章で構成されています。
ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、悲しく残酷な社会問題を題材に取り上げた作品で、6章ごとに起承転結があり、テンポよく読み進めることが出来て、しかも没入感も読み応えもあります。
衝撃のラストは、貫井徳郎さんらしい予想を裏切る結末で、それなりの驚きがあります。ただその結末に至る伏線が弱く、効果が減じてしまっている印象です。
さらに主人公、峰岸晄の人物像を淡々と描き過ぎているためにストーリを俯瞰的に見てしまい、誰にも感情移入することが出来ず、いま一つ小説の世界に入り込めないも残念な点でした。
(単行本:2015年01月/文庫本:2018年04月)
「貫井徳郎 我が心の底の光」を探す
誘拐症候群
話の展開が気になってドンドン読んでしまう。だけど終盤が・・・
誘拐症候群は「症候群シリーズ」第2弾の作品です。
ネット上で「ジーニアス」と自ら「天才」を名乗る犯人が企てる連続誘拐事件。しかもその誘拐人は、数百万程度の身代金を払えば子供が無事帰ってくるため、泣き寝入りのケースが多く、警察は誘拐があったことに気づかないというもの。1998年に刊行された作品ですが、2023年に流行った闇バイトを予見させるような内容も含まれていて、貫井徳郎さんの先見の明を感じられる作品でもあります。
ページを繰る手がとまらない、面白さ抜群の「症候群シリーズ」第2弾という触れ込みどおり、ストーリー設定の面白さと相まって、話の次の展開が気になってドンドンと読み進めてしまいます。
小説終盤に入るまではとにかく面白いのですが、終盤がイマイチ、ネタばれになるので詳しくは書けませんが、いろいろな意味で良くないです。
辻褄を合わせた強引な話の終わらせ方で、リアリティがないのでハラハラ感もドキドキ感も感じられませんでした。いくら小説でもそうしてしまうと・・・ちょっとという印象でした。
(単行本:1998年03月/文庫本:2001年05月)
「貫井徳郎 誘拐症候群」を探す
プリズム
面白く読み進められるが・・・結末はあまりにもモヤモヤする
「プリズム」は、裏表紙のあらすじを引用すると、
・平凡だったはずの小学校の女性教師が自宅で死体となって発見。
・死体の傍らには命を奪ったアンティーク時計が。
・ガラス切りを使って外された窓の鍵。
・遺体からは睡眠薬が検出されて。
・部屋には睡眠薬が混入された箱詰めのチョコレート。
・浮かび上がる容疑者、、事件か?事故か?
と推理小説としての面白い要素が満載です。
話の展開や登場人物の行動動機に多少の違和感を感じつつも、とても面白く読めます。大きく4章に分かれていて、それぞれの章で視点が入れ替わるので中だるみすることなく飽きずに読み進められます。
しかし、結末があまりにもモヤモヤします。結果よりも推理の過程を楽しむ小説と言ってしまえばそれまでだが、それにしてもモヤモヤする。
(単行本:1999年10月/文庫本:2003年01月)
「貫井徳郎 プリズム」を探す
被害者は誰?
サクサクっと面白く読める短編推理小説だが、タッチが軽すぎて緊張感に欠けます
「被害者は誰?」は、頭脳も美貌も態度も規格外のミステリー作家、吉祥院慶彦が事件の謎を解き明かしていく短編推理小説です。
ほかの貫井徳郎さんの作品と比べるとかなり軽いタッチで描かれた4つの短編小説が収録されています。
事件のトリックを巧妙に仕掛けたいという思惑が見え隠れしてしまって、あっ!と驚くようなどんでん返しや種明しとはならないのが残念なポイントです。
面白いか、面白くないかでいうと面白い部類に入るのかもしれませんが、作風が軽すぎて、殺人事件でも気持ちが入らず、緊張感がありません。
「後悔と真実の色」や「慟哭」で貫井徳郎ファンになった方はちょっとガッカリな作品かもしれませんが、軽い息抜きでサクッと読みたいならおすすめの短編推理小説です。
(ノベルス:2003年05月/文庫本:2006年05月)
「貫井徳郎 被害者は誰?」を探す
乱反射
「小さな罪の連鎖による殺人!?」題材は面白い!でも、だらだらと長い。そして結末はまぁこんなもんかという感じ
貫井徳郎さんの「乱反射」は第63回日本推理作家協会賞を受賞した推理小説で、第141回直木三十五賞の候補作品でもあります。妻夫木聡さん、井上真央さん主演でテレビドラマテレビドラマ化もされました。
小さな罪の連鎖による決して法では裁けない「殺人!?」という、いかにも興味をそそられる題材を扱った600頁近くある長編作品です。
いざ読み始めると「-44章」(マイナス44章)から始まるので、すぐに序章、話の前段だということ気付くと思います。日本推理作家協会賞でも「すでに知っている事柄の答え合わせをさせられている」感覚が強いと批評されたように、とにかく前段が長くて、くどいです。
題材が面白そうなだけに期待を持って読み進めましたが、何度か盛り上がりを見せる場面もあるものの、勢い続かず盛り上がる気配だけで終わってしまい結局、予想を裏切るような展開も驚きも無いまま、まぁこんなもんかという感じの結末で読み終わりました。
もっとテンポよく話の展開があって、最後に何か衝撃的などんでん返しがあれば良かったのになぁと「素人目線」で思いました。
(単行本:2009年02月/文庫本:2011年11月)
「貫井徳郎 乱反射」を探す
迷宮遡行
分かりやすいストーリー設定で面白く読めるが、中盤から残念過ぎる失速。
平凡な日常が裂ける―――。
「迷宮遡行」は、置き手紙ひとつを残して、突然、愛する妻が失踪。そもそも妻は何者だったのか!?失業中の冴えない夫、迫水が途切れそうな手がかりを追い、真相に迫る本格ミステリーです。
自信なさげでモテない夫と、愛する妻は不釣り合いなぐらいの美人妻という分かりやすい人物設定も手伝って、スッと小説の世界に入り込めます。
頼りない夫、迫水が危なっかしく、妻の失踪した理由に繋がる手がかりを辿っていくのをハラハラしながら面白く読み進められます。しかし小説中盤ぐらいから徐々に?急に?迫水の人物像がブレ始めます。
小説終盤には夫、迫水がまったくの別人の印象になっています。
さらに残念なのは小説のラスト。さすがにその結末はないだろうと思いました。小説中盤ぐらいまでは、どんな展開になるのだろうとワクワクしながら読めていたので、あまりにも残念な中盤からの失速でした。
(単行本(烙印:改題前):1994年10月/文庫本:2000年10月)
「貫井徳郎 迷宮遡行」を探す
ドミノ倒し
多少軽すぎるタッチに不安を感じながらも、期待感を持って読み進められたけど、最後の種明かしがあまりにもお粗末。
探偵がある殺人事件を調査していると、過去に起きた別の未解決殺人事件との奇妙な共通点が見つかり、さらに別の事件の存在も浮かび上がる。
ドミノ倒しのように真実を追えば追うほど連鎖する事件の真相に探偵が迫るとき、恐るべき結末が待ち受ける―――
シンプルで分かりやすく、めちゃくちゃ面白そうな話の設定で、恐るべき結末を期待しながら、読み始めました。
貫井徳郎さんの作品にしては、ちょっとタッチが軽くて、リアリティに欠けるところがあるものの、何かが起こりそうな程良い緊張感もありつつ、面白く読み進めることが出来ました。
次々と芋づる式に過去の事件と連鎖して、どんどんといろいろな伏線が張られていきます。そろそろ衝撃のエンディングかと予想しながら、さらに読み進めていくと、残りページがかなり少なくなってきて、こんなページ数ですべての伏線を回収できるのかなと不安に感じつつ、待ちに待った種明かしは、あまりにもリアリティが無さ過ぎて、さすがにこれは無いかなと思いました。
多少、不安な話の展開はあるものの、最後の最後まで、エンディングで何が起こるのか!?という期待感を持たされて、読まされた分だけ、余計に最後の種明かしがあまりにもお粗末でした。
(単行本:2013年06月/文庫本:2016年06月)
「貫井徳郎 ドミノ倒し」を探す
鬼流殺生祭
歴史の知識がない当サイト管理人でも面白読めたけど、サスペンスとしては・・・
「鬼流殺生祭」は、「明詞シリーズ」の第一弾です。
ご一新(明治維新)から間もない明詞(明治)時代の東京を舞台としたミステリー小説です。歴史モノということだけで、読み始めから歴史の知識がない当サイト管理人は尻込みしてしまいましたが、意外と歴史の知識がなくても、面白く読めます。
一方、とにかく登場人物が多く、その人間関係を追うだけでも苦労します。よく分からない登場人物が出てきたら、小説冒頭に掲載されている家系図という感じの読み進め方になるので、没入感には欠けます。
また、話の理解を助けるために、見取り図がいくつか描かれているのですが、これがまた分かりにくい。
小説で文字表現できないだけでなく、絵を使っても表現できないストーリーはどうなんだろうな・・・と【素人目線】で思ってしまいます。
サスペンスとしては、正直なところ、いま一つです。ストーリー展開としては、わりと面白く読めますが、謎解きには驚きや意外性がなく、尻込みな感じで読み終わるという感じでした。話の展開が面白かっただけに勿体ないな~という印象です。
(ノベルス:1998年08月/文庫本:2001年05月)
「貫井徳郎 鬼流殺生祭」を探す
さよならの代わりに
読み始めは「面白そう!」でしたが、急に失速・期待外れでした
「私、未来から来たの」駆け出しの役者・和希の前に、殺人事件の容疑者を救うために27年の時を超えて来た一人の美少女が現れた。「さよならの代わりに」は、錯綜する謎を軽妙なタッチで描く青春ミステリです。
未来から来た美少女、青春ミステリーという2つのキーワードだけで好みが分かれる作品だと思います。
当サイト管理人はどちらかと言えば好きな部類の作品ではありませんでしたが、いざ読み始めてみると好印象、面白そう!これからの話の展開に期待が持てそうな序章でした。
しかし1/3ぐらいを過ぎた辺りから、急に失速し始めて、期待外れでした。
だらだらとメリハリがなく、緊張感のない展開が続きます。
最後に期待した謎解きは、驚きも衝撃もなく、そのうえ何となくツギハギ感、後付け感があり、スッキリしません。ネタバレになるので書きませんが、論理が破綻しているところがありそうで、モヤモヤした感じを残したまま、読み終えました。
余談にはなりますが、本作品「さよならの代わりに」も貫井徳郎さんの作風の1つだと思いますが、【素人目線】の当サイト管理人としては、「慟哭」や「後悔と真実の色」の作風のほうが好みで、圧倒的に面白いと思います。
「さよならの代わりに」を読んで面白くないと思った方も、「慟哭」「後悔と真実の色」はぜひ読んでみて欲しいと思います。
(単行本:2004年03月/文庫本:2007年08月)
「貫井徳郎 さよならの代わりに」を探す
明日の空
序章で一気に引き込まれたが、期待が高まった分だけ落差は大きく、がっかり・・・
明日の空の謳い文句は「鮮烈のデビュー作「慟哭」の著者が仕掛ける忘れられない青春ミステリ作品」
帰国子女の栄美が、不安一杯で日本の高校へ転校して、気になる男の子との出会い、そして辛い別れを経験する・・・そして時は流れ、大学生となった栄美の前に現れたある人との出会いをきっかけに高校時代の思い出はまったく別の形を見せてゆく―――。
読み始めると、さすが貫井徳郎さんの文章だけあって、とにかく読みやすいです。全3章に分かれていますが、特に第1章は「青春ミステリ」の謳い文句に相応しい初々しさと甘酸っぱいさが入り混じった序章で一気にストーリーへ引き込まれます。
さらに読み進めると、第1章と第2章の話のつながりがあまりにも希薄なので、話がどう繋がるのか不安に感じる場面もありましたが「慟哭」のラスト一行の衝撃を経験しているので、布石、伏線とも言える第1章、第2章を読み進めるにつれて、どんな結末、種明かし、どんでん返しが待っているのか否が応でも期待は高まります。
終章とも言える第3章は期待外れでした。小説なのである程度、都合に合わせた展開があるのは理解できるが、トリックや行動動機、設定にあまりにも無理があり、ご都合主義でちょっと残念でした。
第1章で大きく期待が高まった分だけ落差があり、ガッカリ感も大きい、そんな作品でした。
(単行本:2010年05月/文庫本:2013年04月)
「貫井徳郎 明日の空」を探す
神のふたつの貌(かお)
随所随所は面白いけど、トリックがあまりにも稚拙で・・・
「神のふたつの貌(かお)」は、神の声が聞きたい。―――巧緻な仕掛けを駆使し、”神の沈黙”という壮大なテーマに挑んだ作品です。神の助けや教いなど、かなり宗教色の強い小説ですが、宗教に疎い当サイト管理人でも、そこそこ面白く読み進められる内容でした。
ただ【素人目線】の管理人でも、読んでいる途中でトリックに気づいてしまうほど稚拙な仕掛けで、さらにそのトリックに衝撃や驚きはないという、かなり残念な感じでした。
結局、読み終わってみて、何がいいたいのかよく分からないというのも残念なポイントでした。これはもしかすると宗教に対する知識がないのが理由かもしれませんが、もしそうであれば、読み手を選ぶ作品だと思います。
ネタバレになるので詳しく書きませんが、読んでいて「この小説、あの作品に似ている!?」という焼き増し感が拭えなくて、新鮮さがありませんせんでした。
小説の部分部分はバラバラに、それなりに面白く読めたけど、1つの小説のとしてまとめるとイマイチという印象です。
一人の作家の作品がすべて面白い!なんてことはないと分かっているのですが、貫井徳郎さんの作品は、好き嫌いなのか、作品ごとの作風なのか、よく分かりませんが、作品ごとの落差が大きい感じがします。
(単行本:2001年09月/文庫本:2004年05月)
「貫井徳郎 神のふたつの貌」を探す
スポンサードリンク