
奥田英朗を読むならコレ!【素人目線で】選ぶ、おすすめ小説ランキング
実際に読んだ奥田英朗さんの小説のなかから読むならコレ!という、思わずハマる、どんどん深みにハマる感触が堪らない!爽やかな読後感が最高!とにかくおすすめの小説をランキング形式で紹介。
特別な文学的才能や知識がない管理人ですが、【素人目線で】先入観なく遠慮なく、素直に面白いと思って選んだ奥田英朗さんの小説を紹介。
独断と偏見そして【素人目線で選んだ】奥田英朗小説の決定版です。
これから奥田英朗さんの小説を読もうと思っていて、どの小説から読めばよいか迷っている方の参考になれば幸いです。
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奥田英朗 小説おすすめランキング
順位 | 作品名 | 評価 |
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我が家のヒミツ | ![]() |
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向田理髪店 | ![]() |
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最悪 | ![]() |
4位 | 空中ブランコ | ![]() |
5位 | イン・ザ・プール | ![]() |
6位 | 我が家の問題 | ![]() |
7位 | 家日和 | ![]() |
8位 | 東京物語 | ![]() |
9位 | 無理 | ![]() |
10位 | ララピポ | ![]() |
11位 | マドンナ | ![]() |
12位 | ヴァラエティ | ![]() |
13位 | 邪魔 | ![]() |
14位 | ガール | ![]() |
15位 | 町長選挙 | ![]() |
16位 | サウスバウンド | ![]() |
17位 | 純平、考え直せ | ![]() |
18位 | オリンピックの身代金 | ![]() |
19位 | 真夜中のマーチ | ![]() |
20位 | ウランバーナの森 | ![]() |
<評価の目安>
:超おすすめ!★5つはぜひ全部読んで欲しい!
:奥田英朗ファンじゃなくても、おすすめの高評価
:奥田英朗ファンなら、とりあえず読んでおきたい外せない作品。
:イマイチかな?好みが分かれる平均点以下。
:読んでいる途中から失敗したと思った残念な1冊。。。
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我が家のヒミツ
爽やかな読後感が最高!清涼剤のような短編小説
我が家のヒミツは、身近にありそうな普通の家族の問題を爽やかなユーモアを交えながら描いた、奥田英朗さんの短編小説です。6つの短編小説が収録されています。
作品1つ1つに違った家族が登場し、それぞれにテーマがあり短編小説とは思えないほど完成度が高く、読み応えがあります。そして何よりもこの小説の魅力は、1つ1つの作品を読み終わった後の読後感です。
読み終わった後、力んでいた肩の力がすっと抜けて、前向きな気持ちさせてくれる読後感が最高です。あまりにも読んだ後の爽快感が気持ちよく、ストレスや悩みで疲れた気持ちをちょっと楽にしてくれる、一種の清涼剤のような小説です。
ギスギスした現代社会や人間関係に疲れやストレスを感じている方にぜひ読んでもらいたい作品です。少し楽な気持になれること間違いなしの作品です。
(単行本:2015年09月/文庫本:2018年06月)
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向田理髪店
北海道の過疎町というロケーション設定から、ついつい「北の国から」との共通点を探してしまう・・・
向田理髪店は、光文社が発行している小説誌「小説宝石」の2013年4月号から2016年2月号に掲載された6つの連作を収録した短編小説で、2022年10月公開、高橋克実さん主演で映画化されています。
かつては炭鉱で栄えたが、すっかり寂れて、高齢化と過疎化が年々進む北海道の町でのさまざまな騒動と人間模様を温かく人情とユーモアを交えて描いた作品です。・・・と小説の内容は裏書によるとこんな説明になります。
炭鉱の町、財政破綻や数々の箱物建設など、おそらく北海道夕張市をモチーフに描かれているのではないとか思いますが、もう少し刺激的な内容が好みな当サイト管理人は、正直なところ、それほど期待をせずに読み始めました。
いざ読み始めてみると、1つ1つの作品の完成度が高く、1作品が連続テレビドラマの1週分という感じでテンポよく、とても面白く読み進められます。
人情味溢れる人間模様を描きつつも、キレイごとだけではない人間臭い嫌な部分も、しっかり描いているリアリティのおかげで、白けず飽きずに読めます。それでも最後は気持ちよく、爽快な気分にしてくれるところもこの小説の魅力です。
北の国からを見て育った世代の当サイト管理人としては、北海道の田舎町というロケーション設定から「北の国から」との共通項を探してしまいましたが、北海道の過疎地という以外に意外と共通点は少なく、いい意味で期待を裏切られつつ、そのオリジナリティの高さも良かった点でした。
(単行本:2016年04月/文庫本:2018年12月)
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最悪
タイトルどおり読んでいて気持ちの良い作品ではないですが・・・どんどん深みにハマる感触がとにかく最悪です。
奥田英朗さんの「最悪」は、2000年の宝島社「このミステリーがすごい!」の第7位に入賞した作品です。
文庫本で600ページを超える長編大作で、手にして読み始めるのを躊躇(ため)うほどの本の厚みですが、実際に読み始めてみるとサクサク読めます。
最初、3人の登場人物のありふれた日常の生活、出来事が流れていきます。しかしながら3人各々が、ちょっとした転機、ふとした場面での行動や判断ひとつで、どんどん複雑に抜け出せない深みにハマっていきます。最悪です。
小説の世界なんですが自分自身にもあり得るな・・・と思えてしまうところが、この小説の魅力です。こんな風にならないように気を付けよう、心掛けようと思いました。
まるで3本の糸がおのおの絡まり、さらには3本の糸が複雑に解きようがないぐらい絡まり合ってしまい、最後には3本が解けて戻っていく。そんな感じの小説です。・・・余計に分かりにくいかな・・・(読んでみてくれた方のなかで共感していただけた方がいれば幸いです)
正直なところ読んでいて気持ちのいい作品ではありません。タイトルから分かるとおり、感動したい、清々しい気分になりたいと思って読む本ではありません。かなり話の設定に無理がある場面もありますが、どんどん読ませるストーリー展開と面白さがありました。
まるで映画、ドラマを見ているかのような小説
奥田英朗さんの「最悪」を読んでいて、映画、ドラマを見ているかのような錯覚に陥る作品でした。逆の言い方をすると、映画化、ドラマ化に向いている作品だろうと思いました。
実際に2005年に沢田研二さん主演でドラマ化されています。
遅ればせながら2020年に小説を読みながら、今、ドラマ化するならどんなキャスティングがイイかなと考えてみました。
あくまでも個人的な意見ですが、川谷信次郎役:寺島進さん、藤崎みどり役:志田未来さん、野村和也役:菅田将暉さんがいいんじゃないかなと思いながら読みました。小説なのにリアルなシーンイメージが思い描けて、楽しい小説です。
(単行本:1999年02月/文庫本:2002年09月)
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空中ブランコ
1話読むごとに肩の力が抜けて気持ちが楽になる不思議な小説
空中ブランコは、奥田英朗さんの「精神科医 伊良部シリーズ」の第二作目にあたる作品です。前作と同様に5つの短編から構成された短編集です。
精神科医 伊良部シリーズの一作目「イン・ザ・プール」は第127回 直木賞候補でしたが、「空中ブランコ」は第131回 直木賞を受賞しました。
さまざまな仕事、職業でストレスや悩みを抱えた人々が、主人公である精神科医師 伊良部一郎のもとを訪れて、伊良部一郎の型破りな治療(?)で患者のストレスや悩みを解決していくというストーリー・・・と基本的に一作目とほぼ変わらない、同じようなストーリー展開ですが、不思議なぐらい面白く読めます。
同じような展開だと分かっていても、悩みを抱える人々と自分との共通点を探り、奇妙な共感を感じながら、短編集なのでサクサクっとテンポよく最後まで読み切ってしまいます。
バリバリの娯楽小説なので文学的な価値はよく分かりませんが、素人目線でみてもなさそうですが、読んでいると、自然に心の鎧を脱ぎたくなり、肩の力がスッと抜けて気持ちが楽になる小説です。
一作目の「イン・ザ・プール」とあわせて、ストレスが溜まっている、ストレスを解消したいという方におすすめの小説です。
(単行本:2004年04月/文庫本:2008年01月)
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直木賞とは?
「直木賞」は通称で、正しくは「直木三十五賞(なおきさんじゅうごしょう)」といいます。
無名・新人及び中堅作家による大衆小説作品に与えられる文学賞で、芥川賞と同様に日本文学振興会(公益財団法人)によって選考が行われて、賞が授与されます。
1935年に芥川賞(芥川龍之介賞)とともに創設されて、以降年2回発表されています。(第二次世界大戦中に一時中断の時期あり)
歴代の受賞作品には、東野圭吾「容疑者Xの献身」、池井戸潤「下町ロケット」などがあります。
対して、純文学作品に与えられる文学賞として「芥川龍之介賞」、通称「芥川賞」があります。
大衆小説とは?
「芸術性」よりも「娯楽性」に重きを置いている小説の総称です。逆に、純文学は大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説を意味します。
日本文学振興会とは?
(株)文藝春秋社内に事務所を置き、「文芸の向上顕揚を計ることを目的」として、芥川龍之介賞、直木三十五賞、菊池寛賞、大宅壮一ノンフィクション賞、松本清張賞の選考と授賞を行う公益財団法人です。
イン・ザ・プール
肩の荷がちょっと軽くなる、清涼剤のような娯楽小説
イン・ザ・プールは、奥田英朗さんの「精神科医 伊良部シリーズ」の第一作目にあたる作品です。第127回直木賞候補になりました。5つの短編から構成された小説になっています。
現代社会でのストレスや悩みを抱えた人々が、主人公である精神科医師 伊良部一郎のもとを訪れて、伊良部一郎の型破りな治療(?)で患者のストレスや悩みを解決していくというストーリーです。
一見ワンパターンとも思えるストーリー展開ですが、伊良部一郎のもとを訪れる患者のストレスや悩みに共感できる部分があり、どうやってそれを解決していくのかというのが気になって面白く読めます。
また羨ましいぐらい自由で破天荒な主人公 伊良部一郎の素直で直感的な行動や発言は、現代社会のしがらみや人間関係のなかで生活している当サイト管理人にとっては爽快感があり、思わずニヤリと(失笑)してしまいます。本当に憎めないキャラクターです。
医学や医療においてはずぶの素人なので、これが本当に治療になるのか分かりませんが、読んでいると少し気持ちが楽になる、清涼剤ような小説です。
(単行本:2002年05月/文庫本:2006年03月)
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我が家の問題
完成度の高い、粒ぞろいの6作品だけど好き嫌いが分かれる!?
我が家の問題は、20007年に刊行された「家日和」に続く、「家族小説」シリーズの第二弾です。
思わず微笑んだり、グッと胸が熱くなりホロリと泣ける短編小説6作品が収録されています。
どの小説も短編小説とは思えないほど完成度が高く、読み応えがあります。
すべての小説が家族に関わる内容になっていますが、家族構成や扱うテーマが異なるため、飽きずにどんどん読めます。
逆に短編小説ごとに取り上げているテーマが違うので、読み手の家族環境やその時の家族状況によって、好き嫌いが分かれたり、思い入れがしやすかったりしにくかったりするかもしれません。
ちなみに当サイト管理人は、「里帰り」と「妻とマラソン」がおすすめです。特に「妻とマラソン」のエンディングは泣けます。
(単行本:2011年07月/文庫本:2014年06月)
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家日和
読み終わった後、少し明るい気持ちやちょっと前向きな気持ちにさせてくれる作品
家日和は、奥田英朗さんの家族小説シリーズの第1弾です。集英社が出版する月刊小説誌「小説すばる」の2004年9月号から2006年12月号に掲載された短編小説が6作品収められています。2007年に刊行されて、第20回柴田錬三郎賞を受賞した作品です。
何気ない日常の出来事やハプニングを描いた作品で、どの作品もほのぼのとしていて、読み終わった後に、少し明るい気持ち、ちょっと前向きな気持ちにさせてくれる作品ばかりです。嘘臭さや作り話っぽさがなく、リアリティのある家族のきずなや優しさをほっこりと感じさせてくれる作品が収められていて、おすすめです。
冷静に考えると重たくなりそうなテーマ題材も軽~いタッチで描かれているので、サクサクっと読み終わってしまいます。逆に言えば、共感を持てない題材の作品だと、何も感じることなく読み終わってしまうので、収められている6作品のなかでも優劣が大きく分かれると思います。
当サイト管理人の独断と偏見だと、収録6作品の評価は
サニーデイ・・・○
ここが青山(せいざん)・・・◎
家(うち)においでよ・・・○
グレープフルーツ・モンスター・・・△
夫とカーテン・・・〇
妻と玄米御飯・・・×
という感じで、おそらく読んだ人の嗜好やその時の状況によって、わりと評価の善し悪しが分かれそうな短編が収録された作品です。
(単行本:2007年04月/文庫本:2010年05月)
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東京物語
ほろ苦い、そう苦い・・・そんなビターな短編集。ただ世代によって感じ方が分かれる作品。
東京物語は、日本国民の生活が一変し、活況を呈した高度成長期を経て、日本中が浮足立つバブル期の1980年代の東京を舞台に名古屋から上京したコピーライターの卵、久雄が個性豊かな様々な人々に揉まれながら、成長する姿を描いた青春小説です。
青春小説と聞くと、多少抵抗感を持つ方や食わず嫌いな方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは奥田英朗さんらしくリアリティのある爽やかすぎない?爽やかじゃない?青春小説で期待を裏切りません。
6つの短編で構成されていて、全体としてつながりがありつつも、各短編ごとに話が完結しているので、とてもテンポよく読めます。
バブル期の時代背景を色濃く、ガッツリと反映したストーリーになっているので、世代によっては、強く共感できたり、逆に時代錯誤と感じるところがあるかもしれません。
バブルが弾けて、バブリーな時代の余韻を感じるぐらいの時期に大学生活を過ごした1970年代生まれの当サイト管理人の場合、わりと共感できつつ、懐かしくもある内容で、若くて眩しかった頃の記憶が蘇り、ちょっとほろ苦くもあり、懐かしくもあり、もうそんな時代がやってこないかと思うと寂しくも感じる短編集です。
(単行本:2001年10月/文庫本:2004年09月)
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無理
エンディングの捉え方一つで評価が大きく分かれる作品
出口のないこの社会で、彼らに未来は開けるのか。
「無理」は、合併でできた地方都市、ゆめので暮らす、年代も職業も違う訳アリの5人を登場人物とした、奥田英朗さんが得意とする群像劇です。
ケースワーカー、高校2年生、セールスマン、市議会議員、スーパーの保安員という、登場人物5人の設定がとにかく絶妙、本当に実在していそうな人物像が小説に強力なリアリティを持たせています。
登場人物5人の各々のありふれた平凡な日常が、ひょんなことから崩壊して有り得ない状況へハマり込んでいきます。普通なら違和感を感じてしまいそうな、このあり得ない展開が奥田英朗さんの巧妙な文章力によって、うまく描かれています。
上下巻合わせて700ページを超える長編小説ですが、とにかく話の展開がテンポ良く、飽きずに面白さを維持したまま、最後まで読み切れます。
残念だった点は、エンディング。あまり書きすぎるとネタバレになるので詳しくは書きませんが、【素人目線】の当サイト管理人としては、好きな結末ではありませんでした。
また「これで終わり!?」という、ちょっと尻切れトンボな印象も残しました。逆に言うと、エンディングの捉え方で大きく評価の変わる作品とも言えそうです。
(単行本:2009年09月/文庫本:2012年06月)
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ララピポ
どんどんクセになる、現代日本のぶっ壊れた、ぶっ飛んだ6人の日常を描いた下流小説
現代日本のぶっ壊れた6人の日常?を描いた小説。
一見、短編のように思いますが、1つ1つの話が繋がっていきます。確かに後ろ書きには、「格差社会をも笑い飛ばす六人の、どうにもならない日常を活写する群像長篇」とありました。こう表現すると、ありきたりな小説のように思えますが、「ララピポ」は、とにかくぶっ飛んでいます。そして感想を表現しづらい小説です。
推理小説、SF小説、ホラー、ファンタジー、恋愛、青春、歴史、経済、官能・・・・・いろいろな小説のジャンルがありますが、ララピポは、何のジャンルに属す小説と言えばよいのか。。これまた後ろ書きに「下流小説」とありますが、まさに下流小説と呼ぶのが一番ピッタリくるように思います。
ぜひ1章目が肌に合わない方も我慢して2章目、3章目ぐらいまでは読んでみてください。
読み始めて1章目から、エロ描写があまりにも多く、正直、これはキツイなと思いました。
この調子でずっと続くことはないだろう、続くなら読むのをあきらめようと思いながら、2章目、3章目と読み進めると、ずっとエロ描写は相変わらず続きますが、エロ描写に慣れるのと反比例して、どんどん面白くなってきます。5章、6章あたりになると次にどう繋がるのか気になって止められなくなります。
登場する人物は、普段、普通の生活を送っている読者からすれば、かなりぶっ壊れた人たちです。でも実在しそうな人たちが登場します。書かれている内容はスッカスカなんですが、共感できないけれど何か考えさせられる、現代日本を痛烈に風刺する側面をもった「下流小説の白眉」です。
エロ描写が多すぎるので、マイナス0.5★ですが、逆に少ないと「ララピポ」じゃなくなる気もしますが・・・
何だかんだ言って結局のところ、奥田英朗さんのほかの作品も読んでみようと思います。
(単行本:2005年09月/文庫本:2008年08月)
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マドンナ
軽いタッチで、最後にほっこりする、40代の課長「おじさん」の日常を描いた短編小説。
マドンナは
17歳年下の部下に恋をする課長
息子がダンサーになりたいと言い出した課長
同い年の女性が上司になった課長
など、40代の課長「おじさん」のさまざまな日常を描いた5つの短編小説が収められた作品です。
いろいろなシチュエーションの作品が収録されているので、40代以上の男性陣にはズバリ心当たりのある作品もあると思います。
どこにでもありそうな日常を描いているので「そうそう」と共感できる半面、非日常的なドラマチックな展開には欠けます。
驚くようなどんでん返しはないですが、最後にほっこりできるエンディングは、いかにも奥田英朗さんらしい作品です。
(単行本:2002年10月/文庫本:2005年12月)
「奥田英朗 マドンナ」を探す
ヴァラエティ
その名の通り「ヴァラエティ」に富んだ短編集。悪く言えば、統一感のないバラバラの短編集ですが・・・
「ヴァラエティ」は、作品名の通り、ヴァラエティに富んだ7つの短編で構成された短編集です。
悪く言えば、統一感のないバラバラの短編作品なのですが、バラツキはあるものの、短編作品とは思えないぐらい読み応えがあり、話の展開にワクワクしながら面白く読めます。
ネタバレに注意しながら、各作品の評価(ヴァラエティの中での相対評価です)と感想を記載しておきます。
1作目「おれは社長だ!」★★★★★
2作目「毎度おおきに」★★★★★
1作目と2作目は、話に繋がりがあります。奥田英朗さんらしい、人間味溢れる登場人物で、短編作品とは思えないぐらい読み応えと没入感がありました。これで1冊書いてほしい、シリーズ化してほしいと思えるぐらい、とにかく面白かったです。
3作目「ドライブ・イン・サマー」★★★☆☆
こちらも1、2作目とは違う意味で、奥田英朗さんらしくスピード感あるストーリー展開でハラハラ、ドキドキさせてくれます。
4作目「<ショートショート>クロアチアvs日本」★☆☆☆☆
こちらは今一つでした。
5作目「住み込み可」★★☆☆☆
種明かしが気になりながら、短編集らしくサクッと読める作品です。
6作目「セブンティーン」★★★☆☆
高校生の母親の気持ちの見事に描いた短編作品。
7作目「夏のアルバム」★★★★☆
子どもの繊細な心の描写がとにかく素晴らしい、涙なしではいられない作品です。
短編作品の間に、俳優・コメディアンのイッセー尾形さん、脚本家・小説家の山田太一さんとの対談が収録されていますが、正直、こちらは余計な気がしました。一通り読んでみましたが、互いに褒めあったり、遜(へりくだ)りあったりしている内容がほとんどで、当サイト管理人の【素人目線】にはあまり面白く思えず、収録する必要があったのか疑問が残りました。
「あとがき」を奥田英朗さんが書かれています。結構レアなのではないでしょうか(当サイト管理人の記憶ではあまり?全く?無かったような気がします)最後の最後まで興味深く読み切れて、満足感のある作品でした。
(単行本:2016年09月/文庫本:2019年09月)
「奥田英朗 ヴァラエティ」を探す
邪魔
面白い!次の展開が気になって、ページを繰る手が止まらない。だけど・・・
この小さな幸せは、誰にも壊させない
「邪魔」は、サラリーマンの夫と子供2人と東京郊外の建売り住宅に住む、スーパーのパート歴1年の34歳主婦、及川恭子の平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。日常に潜む悪夢、やりきれない思いを疾走するドラマに織りこんだ傑作。2002年「このミステリーがすごい!」第2位にも選ばれた作品です。
「邪魔」は、「このミステリーがすごい!」入賞作品で「比類なき犯罪小説」とも称される「最悪」と比較されることの多い作品です。
実際に「邪魔」を読んでみると、多少序盤が冗長気味なところは差し引いて、たしかに面白い!次の話の展開が気になってページを繰る手が止まらず、上下巻あわせて、およそ800ページある頁数を感じさせないほど、どんどん読み進められます。
不信が波紋のように広がり、日常に潜む悪夢の泥沼にずぶずぶとハマっていく様子が怖いけど、癖になる感じがあります。
小説の終盤、明らかにクライマックスへ向かっていくストーリー展開があり、否が応でもアッと驚く結末?どんでん返し衝撃の結末?に期待が膨らみましたが、う~~~んそんな感じで終わるのか、という期待外れのエンディングでした。
小説の序盤から中盤、結末直前まで、面白かっただけに、尻すぼみな結末がどうにかならなかったのかな、と思ってしまう作品でした。
(単行本:2001年04月/文庫本:2004年03月)
「奥田英朗 邪魔」を探す
ガール
当時は、すべての女性に「これって、私のこと!」と言わしめた爽快ベストセラーだったのかも!?
「ガール」は、
・課長に抜擢された女性社員
・マンション購入を意識する独身女性
・30歳を過ぎてガールでいることに迷う独身女子
・仕事にやりがいを感じたいシングルマザー
・一回り年下の新入社員に夢中になる女子社員
など、さまざまなシチュエーションにおける30歳を過ぎた働く女性を活き活きと描いた短編集です。
すべての女性に「これって、私のこと!」と言わしめた爽快ベストセラー・・・と評されるように、奮闘する女性社員、葛藤する独身女子、戸惑うキャリアウーマン、ときめく働く女性の姿がリアルに描かれています。
割とライトな題材なので、肩肘張らずに気楽に楽しく読めます。何だかんだ言いながらも、ほっこりする読後感が癖になって、次々とサクサク~っと読めてしまう軽快感も魅力です。
残念な点としては50代のおじさんである当サイト管理人でも、ちょっと時代錯誤を感じる女性像です。確かに「これって、私のこと!」と思う女性がいる(居た?)のかもしれませんが、2006年刊行という時代背景もあってか、1985年~1991年のバブル期に入社した年代をイメージした女性像が強いので、イマドキではないと感じる方も多いかもしれません。
(単行本:2006年01月/文庫本:2009年01月)
「奥田英朗 ガール」を探す
町長選挙
直木賞候補作、直木賞受賞作ときての第三作目。否が応でも高まる期待を持ちつつ読んだ感想は?
町長選挙は、「イン・ザ・プール」(直木賞候補作品)、「空中ブランコ」(直木賞受賞作品)につづく、奥田英朗さんの精神科医 伊良部シリーズの第三作目です。
直木賞候補作、直木賞受賞作ときての第三作目なので、否が応でも期待は高まります。「イン・ザ・プール」と「空中ブランコ」は5つの短編小説が収録されていましたが、町長選挙は4つの短編小説が収録されいます。総ページ数は10頁も変わらないので、1つ1つの作品が少し長い感じ、特に小説の作品名にもなっている「町長選挙」が長めです。
前述のとおり、否が応でも期待が高まりつつ読んでみた感想は、どの作品も面白いのだけれど、前作、前々作に比べるとイマイチ響くものがありませんでした。特に「町長選挙」がイマ一つでした。
「イン・ザ・プール」や「空中ブランコ」を読んで感じたような肩の力が抜けて気持ちが楽になる、何とも言えない清涼感が「精神科医 伊良部シリーズ」の魅力だと思うのですが、「町長選挙」に収録されている4作品はどれもその清涼感が中途半端に感じました。
残念だったのは、主人公である伊良部一郎のキャラクター(個性)が「町長選挙」ではブレている印象を受けました。「イン・ザ・プール」や「空中ブランコ」では、破天荒で奇人だけど世間に毒されない少年の純粋さが憎めない魅力だったのに、「町長選挙」では変に俗っぽい感じがして、惹かれるものがありませんでした。
(単行本:2006年04月/文庫本:2009年03月)
「奥田英朗 町長選挙」を探す
サウスバウンド
奥田英朗さんらしい「ほっこり」とするストーリーだが、時代錯誤の感が否めない
サウスバウンドは、2006年の本屋大賞 第2位にランキングした大傑作長編小説です。
上下巻の文庫本を合わせて600ページを超える長編大作ですが、話の展開が速いので中だるみすることなく飽きさせず、どんどんと読み進められます。
奥田英朗さんらしい、ほっこりとさせられる家族や兄弟、友人のつながりを描いた小説です。奥田英朗さんの読ませる力はさすがで、読んでいる間、小説の世界に入り込み、幸せな気分になったり、ハラハラ、ドキドキ、ワクワクさせられます。
残念なのは、1973年生まれの当サイト管理人にとっても小説の話の設定が古く、時代錯誤の感が否めないという点です。
小説の世界に入り込んでいても、随所随所でリアリティに乏しく「ちょっとこれはないなぁ・・・」と現実に引き戻されてしまうのがマイナスポイントでした。
話の一つ一つは面白いのですがストーリー展開に繋がりがなく、伏線回収もないため、驚きの要素に欠けるのもちょっと残念な点です。
(単行本:2005年06月/文庫本:2007年08月)
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純平、考え直せ
結末をドキドキしながら読み進めた・・・だけど結末は何だかなぁ
純平、考え直せは、歌舞伎町ではちょっとした人気者、気のいい下っ端やくざの坂本純平が対立する組の幹部の命(タマ)を獲ってこいと命じられ、決行までの三日間に気負い立つ純平が遭遇する、さまざまな出会いや別れを描いた小説です。
正直なところ、やくざの抗争というちょっと時代錯誤感のある題材ですが、それでも出会いと別れの末に純平がどんな運命を選ぶのか!?いろいろな予想や想像を膨らませてドキドキしながら、どんどん読み進められます。
裏表紙の内容紹介に「一気読み必至の青春小説!」とある通り、確かに一気読みしてしまいますが、純平はもう二十歳を超えているいい大人なので青春小説ではないような、、、
奥田英朗さんの読ませる力も手伝って、結末までドキドキしながら面白く読めただけに、拍子抜け感のある結末は何だかなぁという印象です。
(単行本:2011年01月/文庫本:2013年12月)
「奥田英朗 純平、考え直せ」を探す
オリンピックの身代金
期待に胸を膨らませて読み始めると・・・
「オリンピックの身代金」は、吉川英治文学賞を受賞した奥田英朗さんの代表作品です。
「圧倒的スケールと緻密なディテールで描く犯罪サスペンス大作!」のキャッチコピーで、期待に胸を膨らませて読み始めました。
アジア初の開催となる東京オリンピックが開催された1964年(昭和39年)、60年前の高度成長期真っただ中の日本を舞台とした物語です。さすがに色々な点において時代のギャップを感じますが、「緻密なディテールで描く」というキャッチコピー通り、文章から当時の街や人々の様子が感じられる見事な描写力で書かれています。
上下巻あわせて約800ページの長編大作ですが、奥田英朗さんの文章がとても読みやすいので、どんどん読み進められます。
東京オリンピックの開催を妨害する・・・五輪開催に沸く東京、国家に挑む一人の青年というストーリー設定のスケールの大きさも面白いと思ったのですが、国家権力に立ち向かうモチベーション、動機付けが今一つ伝わってこなかったので、主人公である島崎国男に感情移入できなかったので、小説の魅力がかなり低減してしまいました。
キャッチコピーに「犯罪サスペンス大作」とありますが、話の展開にアッと驚くような衝撃はなく、どんでん返しの結末もなく、予想の範疇というのが残念な点でした。
面白くどんどん読めますが、ハラハラドキドキするような劇的な展開を期待して読むと肩透かしを食うかな、と思います。
(単行本:2008年11月/文庫本:2011年09月)
「奥田英朗 オリンピックの身代金」を探す
真夜中のマーチ
ストーリーの序盤、マーチというよりもビートを刻むようなテンポの良い展開にグイグイと引き込まれたのが嘘のような・・・
真夜中のマーチは、自称青年実業家のヨコケンと商社のダメ社員のミタゾウ、謎の美女クロチェがそれぞれの思惑を抱えて手を組んで、美術品詐欺のアガリ10億円をターゲットに完全犯罪を目指す、痛快クライム・ノベルの傑作です。
裏表紙の内容紹介ベースの粗筋をみると、よくある設定と思いながらも程よく興味をそそられて面白そうと期待を持ちつつ読み始めました。
自称青年実業家のヨコケンの登場シーンから始まり、ダメ社員 ミタゾウとの出会いと、マーチというよりもビートを刻むようなテンポの良いストーリー展開にグイグイと引き込まれていました。
しかし、続いてクロチェが登場して、3人が手を組んだあたりから、なんだか雲行きが怪しくなり、その後はグダグダのドタバタ劇が続きました。
2時間で完結するテレビドラマのように、時間の都合で申し合わせたような話の展開で、小説序盤の面白さがとても勿体ないと思ってしまう作品でした。
(単行本:2003年10月/文庫本:2006年11月)
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ウランバーナの森
伝えたいことは分かるけど、微妙・・・
ウランバーナの森は、1997年に刊行された奥田英朗さんの初期の頃の作品です。
世紀のポップスター・ジョンが、家族との素敵な避暑を軽井沢で過ごそうとしたが、ひどい便秘でぶち壊し。あまりの苦しさに病院通いをはじめたジョン・・・ウイットとユーモア、そして温かい思いに溢れた喪失と再生の物語。
大ベストセラー小説「最悪」を先に読んで「ウランバーナの森」を手にした方は、作風の違いにかなり戸惑うかもしれません。
「しあわせ」でありたいという自己暗示にようなもの。けれどそれのどこが悪いというのか。
読み始め、何を読まされているんだろうという戸惑いを感じながら読み進めて、小説終盤に差し掛かったところで、やっと「素人目線」の管理人なりに奥田英朗さんが伝えたいことがぼんやりと理解できた気になりました。
そんな小説終盤でも、空中ブランコに通ずるような清涼感がありつつも、わざわざジョンが便秘で苦しむ物語設定にする必要があったのかという疑問を感じました。
もっと読者に強く刺さるようなシチュエーションなら、自然と涙してしまうような小説になっていたのではないかと残念で、微妙な読後感です。
(単行本:1997年08月/文庫本:2000年08月)
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